膀胱尿管逆流症

【疾患の概念と成因】

  原発性VURは膀胱(ぼうこう)にたまった尿が尿管・腎盂(にょうかん・じんう)へ逆流する現象で、尿管膀胱移行部(にょうかんぼうこういこうぶ)の逆流防止のしくみが弱いために発生する先天性の疾患です。

 

【疾患の特徴】

  VURの80-90%は尿路感染症をきっかけに発見され、有熱性尿路感染(急性腎盂腎炎 きゅうせいじんうじんえん)を起こす小児の30-50%にVURが発見されます。出生前後に超音波診断をきっかけに発見される症例も増えています。VURは自然消失する性質があり、発見年齢が低く、グレード(VURの逆流の程度です)が低く、片方のみの場合には消失率が高いことが知られています。VURにともなう腎障害は逆流性腎症(ぎゃくりゅうせいじんしょう)と呼ばれていますが、胎児診断で発見された患者さんにも腎障害が認められることから、すでに胎児期にも腎障害が発生すると推測されています(先天性逆流性腎症)。逆流性腎症は小児期から若年者の末期腎障害の原因として5-6%を占めることが知られている重要な疾患です。家族内発生が25-50%と高いことも特徴です。

 

【診断と検査】 

  VURの程度(グレードといいIからVに分類されます、図1:ここをクリック)、および下部尿路の機能を判定するためには排尿時膀胱尿道撮影(はいにょうじぼうこうにょうどうさつえい)をおこないます。腎実質障害の評価にはDMSA腎シンチグラムが必須です。総合的な腎機能の評価には血清クレアチニンや血清シスタチンCを測定します。また、腎尿細管障害・糸球体障害の評価には尿中小分子蛋白や微量アルブミンの評価が有用です。

 

【治療】

  VURの治療は腎機能の保護が最優先されます。保存的治療(手術を選択しない治療)をおこなう場合は、排泄コントロールと尿路感染の防止が重要です。排泄管理(時間・回数決めて排尿、便通のコントロール、抗コリン薬の内服)や少量の抗菌薬予防投与が有効です。尿路感染のコントロールが困難な患者さんに対しては手術も考慮します。結果的にグレードIVやVの症例は手術となることが多いのですが、VURには自然消失傾向が知られます。とくに乳児では自然消失率が高いため、腎シンチグラム(図2:ここをクリック)により腎障害を評価した上で、排泄管理と尿路感染のコントロールを優先して手術実施の適応を考えます。現在本邦では開腹による逆流防止手術が一般的で、成功率は95%以上です。一部の施設では腹腔鏡による逆流防止術もおこなわれています。2010年以降はデフラックス®という充填物質(じゅうてんぶっしつ)による低侵襲の内視鏡的注入治療もおこなわれるようになりましたが、成功率は80%程度です。

 

【外来経過観察上のポイント】

  逆流性腎症はVURの消失後も進行します。進行性の腎障害や高血圧・蛋白尿を認める場合には食事療法(低蛋白食、減塩食)とともに薬物療法(ACE阻害薬、AT1拮抗薬:血圧を上昇させるレニン・アンジオテンシン系を抑制する薬剤です)が有効といわれます。とくに初診時のDMSA腎シンチグラムで広範に腎障害を認める場合にはリスクが高いため、長期にわたる経過観察が必要です。女性に関しては周産期合併症の発生について注意する必要があります